SH田中史朗、HO堀江翔太、FLマイケル・リーチと3人の日本代表選手が移籍し、例年以上にラグビーファンだけでなく、スポーツファンの注目を浴びている「スーパーラグビー(Super Rugby)」について簡単に紹介!
スーパーラグビーは、ニュージーランド(NZ)、オーストラリア、南アフリカのワールドカップ優勝経験のある3ヵ国から、それぞれ5クラブ、計15のクラブが優勝を争う大会だ。世界最強、最速と言われるアタッキングラグビーが最大の魅力である。
毎年2月から8月上旬(スーパー15になる前の2010年までは6月)にかけて開催され、リーグ戦はワールドカップやトップリーグ同様の勝ち点制によって行われる(勝利:勝点4、引き分け:勝点2、4トライ以上:勝点1、7点差以内の敗戦:勝点1。また試合がない週は勝点4が加算される)。そしてリーグ戦後、上位6チームによるプレーオフが行われ優勝が決まる。
スーパーラグビーはもともと13人制ラグビー(ラグビーリーグ)の人気に対抗するために、オーストラリアで1986年に始まったニューサウスウェールズ協会が主催した招待試合に起源を持ち、クイーンズランド州やNZのオークランド州代表などを合わせて6チームで試合を行っていた。1993年からは南アフリカのカーリー・カップ上位のチームも招待するなど、3カ国の州代表選手権上位10チームを集めた「スーパー10」として1995年まで開催。
1995年にラグビーがオープン化(プロ化)し、南アフリカのワールドカップの成功などの影響もあり、南アフリカ(SA)、NZ、オーストラリア(AR)の3協会は「SANZAR」を結成。1996年から「トライネイションズ」(現在はアルゼンチンも加わり、「ザ・ラグビー・チャンピオンシップ」に改名)開催を決め、さらに同年に12チーム対抗の国際的なリーグを創設した。それが現在の「スーパーラグビー」の直接的な起源となる「スーパー12」だった。
1996年に始まった「スーパー12」はNZから5チーム、南アフリカから4チーム、オーストラリアから3チームの合計12チームが国境に関係なくリーグ戦を行うことになった。総当たりの11試合を行い、勝ち点上位の4チームがプレーオフに進出する形式を取った。初年度はレッズ(オーストラリア)がリーグ戦で首位に立ったが、決勝でブルース(NZ)が勝利し、初優勝を遂げた。
1997年はブルースが連覇、1998年から2000年はクルセイダーズが3連覇を達成。2001年、現在日本代表ヘッドコーチであるエディー・ジョーンズ氏が指揮を執ったブランビーズがオーストラリアとして初めて優勝する。その後も2005年までクルセイダーズ、ブルース、ブランビーズ、クルセイダーズとNZとオーストラリア勢の優勝が続き、南アフリカ勢は優勝することができなかった。
2006年シーズンからオーストラリアのウェスタン・フォースと、南アフリカのチータースが新たに加入し「スーパー14」へと名称変更。それでもクルセイダーズの強さは変わらず、2006年に連覇を達成。だが2007年、ワールドカップの優勝を暗示していたかのように、南アフリカ勢として初めてブルズが優勝する。2008年にはクルセイダーズが7度目の優勝を果たしたが、2009年と2010年とブルズが連覇を達成している。
2011年からオーストリアのレベルズが加入し、15チームとなり名称も「スーパーラグビー」となった。各国5チームとなったため、南アフリカのチームの移動負担を軽減するなどの目的から、総当たりではなく18週で16試合を行う「スリー・カンファレンス方式」へとシステムが変更となった。
同じ国(=同じカンファレンス)の4チームとはホーム&アウェイで対戦(8試合)、他の国(=他のカンファレンス)のチームとホームで2試合、アウェイで2試合(2×4試合で計8試合)の合計16試合戦う(つまり、リーグ戦では他のカンファレンスのチームとは、1チームずつ対戦しないチームが出てくることに)。
プレーオフには各カンファレンス1位の3チームと、残りの12チームの中で勝ち点上位の3チームが4位~6位扱いとなり進出する。そしてカンファレンス優勝の中で一番勝ち点が少ないチームが3位扱いとなり6位と準々決勝を対戦し、4位と5位が準々決勝で対戦する。もちろん上位チームにホームアドバンテージがある。さらに、その勝者がそれぞれシードされていた2位と1位と準決勝で対戦し、最後に決勝戦を行って優勝を決定する。
2011年はレッズ(オーストラリア)がクルセイダーズを18-13で破って初優勝。オーストラリア勢の優勝は2004年のブランビーズ以来の快挙だった。2012年は、CTBソニー・ビル・ウィリアムスなど前年のワールドカップで優勝したNZ代表を多く擁したチーフスが、南アフリカのシャークスに37-6で快勝し、初優勝を遂げた。
今シーズン、南アフリカでライオンズに代わって、新たに「サザン・キングス」が加入したが、システムに大きな変更はない。日本代表FLリーチがプレーすることになったチーフスが連覇を達成するのか、それとも南アフリカやオーストラリア勢が巻き返すのか。NZ代表CTBマア-・ノヌーらが移籍した、田中が所属するNZのハイランダーズも優勝候補と言われている。
今シーズンは2月15日に開幕し、6月のテストマッチ期間である「ウインドウマンス」を経て、7月13日までリーグ戦が行われる。そして7月19日から6チームによってプレーオフが始まり、8月3日に決勝が行われる。今シーズンのスーパーラグビーは、いったいどのチームが栄冠に輝くだろうか。
オーストラリア・カンファレンス5チーム
ブランビーズ(キャンベラ)1996年〜、優勝2回
ワラタス(シドニー)1996年〜、優勝0回
レッズ(ブリスベン)1996年〜、優勝1回
ウェスタン・フォース(パース)2006年〜、優勝0回
レベルズ(メルボルン)2011年〜、優勝0回
ニュージーランド・カンファレンス5チーム
ブルース(オークランド)1996年〜、優勝3回
チーフス(ハミルトン)1996年〜、優勝1回
クルセイダーズ(クライストチャーチ)1996年〜、優勝7回
ハイランダーズ(ダニーデン)1996年〜、優勝0回
ハリケーンズ(ウェリントン)1996年〜、優勝0回
南アフリカ・カンファレンス5チーム
ブルズ(プレトリア)1996年〜、優勝3回
チータース(ブルームフォンテーン)2006年〜、優勝0回
シャークス(ダーバン)1996年〜、優勝0回
ストーマーズ(ケープタウン)1996年〜、優勝0回
サザン・キングス(ポートエリザベス)2013年〜、優勝0回
斉藤健仁 スポーツライター。1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。印刷会社の営業を経て独立。サッカーやラグビー等フットボールを中心に執筆する。現在はタグラグビーを少しプレー。過去にトップリーグ2チームのWEBサイトの執筆を担当するなどトップリーグ、日本代表を中心に取材。プロフィールページへ |